水島課長に声を掛けられた「 沢巡査、明日、本庁に出向いてもらえるか 」 「 本庁と言うと、東京の警察庁本部の事ですか? 」 「 ああ、明日、東京の方でセレモニーが有って 其処で ハクのお披露目をするそうだ 」 「 あっ、吉川巡査部長、君も同行してくれ 」 「 明日は 早朝に出発して 向こうで一泊、翌日に帰ってくる手順でたのむ 」 隼人は 何の気無しに「 お泊りですか? 」 「 何考えてんのっ? 」パシッ!! 吉川巡査部長に デコピンを頂いた 隼人は 顔を真っ赤にしながら 「 けっ、決して みだらな事は考えては居りませんです はい 」 シュタッ、ビシッと敬礼をして見せた 「 隼人、お前の腕では まだまだ 吉川君を 寝技にもってけね~ぞ 」 「 なにしろ 吉川巡査部長は 合気道の有段者なんだからなっ 」 「 課長、言葉を慎んで下さい、それって セクハラですよ 」 「 そうか、すまん、すまん 」 「 おっと、言い忘れた、宿舎の方は 向こうで官舎を用意してくれるそうだ 」 ・・・ コン、コン、 「 ハク君、トランク開けてくれる 」「 はいな~っ 」 バタン、 「 けっこうな量の荷物ですね 」 「 あら、普通、女性の荷物って こんなものよ 」 「 じゃ、行きますかっ 」 「 ハク、運転はお前に任せるから 名神から東名高速のコースで頼む 」 「 了解 」 良く晴れた絶好のドライブ日和であった 「 隼人はん、今日は良く晴れて ほんま 気持ち良~走れまんなぁ 」 「 ハク お前でも 天候を気にするのか? 」 「 当たり前でんがな、わては 色白でっけど 日焼けより水垢の方が嫌いでんなぁ 」 やがて 二人を乗せたハクが 神奈川県に入ろうかと言う時 一台の黒塗りのジャガーが猛スピードで 俺達の横を通り過ぎた 「 追跡します 」 ハクは行き成り スピードを上げると シートに沈み込むようなGを感じた 「 おい、ハク、大丈夫なのか? 相手はジャガーだぜ 」 「 何言うてまんねん、あれは改造しても高々600KW出力の レシプロ・ガソリンエンジンでっせ 」 「 わては まだ時速300キロまでしかテスト走行はしてまへんけど 1400KWのタービンエンジンでっさかい 負ける訳がおまへん 」 ハクは 回転灯とサイレンを作動させ 車載カメラのモニターを映し出すと パッシングを繰り返しながら追尾する 隼人は マイクを持ち上げ 「 前方を走る 横浜む-****の車両、直ちに路肩に停車しなさい 」 「 前方を走る 横浜む-****の車両、直ちに路肩に停車しなさい 」 と警告を発するが ジャガーは 車の群れを縫う様に 尚もスピードを上げてゆく ハクは 其の後方20メートルの車間距離を維持しながら 獣の様にしなやかなハンドル捌きで ジャガーを追い詰める 車の一団をやり過ごし 前方の視界が広がると ハクは 一気に加速し ジャガーを追い抜き ハザードランプを点滅させた 流石に観念したであろう、ジャガーはその車体を路肩に沿わせるように停止した 「 ハク君、あいつを止めても 此処は私達の管轄じゃないのよ 」 「 隼人はんは 地方公務員でっけど わては国家予算で作られた国家公務員みたいなもんですわ 言わば 警察署長クラスやと思も~てください 」 「 わての場合 全国何処でも執行権を行使できますんや それに わては優秀でっさかい 逮捕状なぞ チョコチョコと作れまっせ 」 「 分かった 」 バタン、 隼人は ジャガーのやや前方に止められた ハクから出ると ジャガーの元へと歩いて向った 隼人が ジャガーの数メートル先に近づいた時 グォーン、行き成り車が走り出し 又しても 逃走する ギャギャギャギャ ハクは タイヤ音を激しく鳴らし 隼人の元へバックすると ドアを開け 「 隼人はん 」 バタン、 ギャギャギャギャッ、ギューン 隼人がシートに着くや否や 激しいタイヤ音とやや甲高い音を響かせて ゼロヨン・レース並みのスタートダッシュ!! 「 隼人はん、威嚇にペイントボールを撃ちまひょか? 」 「 許可する、」 バスン!! ペイントボールはジャガーの黒い車体後部に 鮮やかな赤い色を散りばめた 車は止まり 今回は ジャガーの真後ろにハクが停車した 「 隼人はん 今、神奈川県警の高速機動隊が こちらに向かってます 書類とデータは わてが揃えまっさかい 運転者を確保したら 引導を渡して 引き渡すだけでよろしおまっせ 」 「 隼人君、拳銃を 」「 はいっ 」 隼人は ドアから出ると 拳銃を構え ゆっくりと車に近づく ジャガーの運転席のドアが開き 中からは スーツ姿の恰幅の良い紳士が出て来た 「 ドアを閉めて 手はルーフの上に、」・・・ カシャッ、 男は悪びれた様子も無く「 えっ、何故手錠を? 」 「 彼方の執った行動は 施錠に値します 」 「 罪状の説明は 後部座席で行ないます 」 バサッ「 巡査部長、説明の方はお願いします 」 「 僕は 後方に表示板を取り付けて来ますので 」 バタン、 やがて 神奈川県警の高速機動隊が到着すると 「 それでは 被疑者の方は よろしくお願いします 」 「 噂には聞いていましたが それにしても、あのジャガーを捕まえるとは この車は一体何キロまで出せるのですか? 」 「 いやっ、本人は 300キロまでしかテストしていないと言ってますが 」 「 本人? 」 「 あっ、すいません、この車は自我の塊のような物で 自分はジャガーなんかの 倍以上の馬力が有るなどと 嘯いて居るんです 」 「 ははははっ、それは、それは、けっこうなじゃじゃ馬てトコロなんですね 」 ・・・ 其の日のセレモニーも 要約無事に終え バタン、 「 フゥー 」 「 隼人はん、夕子はんは どないしはりました? 」 「 ああ、こっちの知り合いと飲みに行くんだとさ 」 「 あ~あ~ 俺の事、誘っても暮れねーし 」 「 そら、落ち込みますわなっ 」 「 隼人はん ほんま 可哀想、可哀想 」 「 お前に 其処まで言われる方が 可哀想だよ 」 「 もう良いから、宿舎まで連れてってくれ 」「 了解 」 ↑ ブログトップ
by toxtu
| 2017-02-20 21:44
| 自作小説
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